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思い出の成人式 一人ひとりに宿るチカラの源【魂のエピソード】

  
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思い出の成人式 一人ひとりに宿るチカラの源【魂のエピソード】

成人式の日、それは美容室にとって大いに気合いが入る日。

その年の成人式も、夜中の午前2時からお客様を迎え入れ、栄養ドリンクを飲んで気合いを入れてから、手を休める事なく仕事をしました。
ようやくその日最後のお客様となり、成人式ヘアーをつくっていると、ものすごく視線を感じました。
その先へチラッと目をやると、その子のお母様がじ~っと見ているのです。

娘さんのヘアースタイルの出来をチェックしているのかな~と思い、
「よかったら隣で見て下さい。もう落ち着いたので、こちらに座っても大丈夫です。近くの方がよく見えますよ♪」
と言い、娘さんの隣に座ってもらいました。

しばらくすると、今度は鼻をすする音が聞こえてきました。
気を使いながら、その音の方をみると、今度は涙をポロポロと流しているではありませんか・・・
なんて言葉をかけていいのか分からなかったけど、
「本当におめでとうこざいます。ここまで育てるのも、大変な御苦労があったことをお察しします」
 そして娘さんに、
「○○ちゃん、これからもお母さんの言うことをちゃんと聞くんだよ!そしてこれからは○○ちゃんが返す番だからね」
と言いました。

すると、お母さんの嗚咽がお店の中に響きました。
まずい事を言ってしまったかな?と反省しながら成人式のヘアーと着付けが終わり、その親子はお帰りになりました。

 

数日後、娘さんが1人でお店にやってきました。成人式の時のお礼にと、菓子折りをもってきて、話してくれました。

実はお母さま、5年前に余命宣告されていて、医者に言われたのが、もってあと2年・・・
告知は、娘さんが15歳の時なので、本来なら17歳の頃には旅立っている計算です。

でも、お母さんは、口ぐせのように言っていたそうです。
「あんたが成人するまでは生きていたい!成人式で着物姿が見れたら、他には何もいらない!それまでは何としてでも生きたい!」

必死の闘病生活だったそうです。
「だから泣いていたんですね。念願の着物姿が見れて」

 すると娘さんが言いました。
「それもそうなんですが、もう一つ理由がありまして」

 

「どうしたの?」
「実は私、口うるさく注意してくる母が嫌いで、高校卒業後、すぐに就職して引越したんです。それからはほとんど連絡も取らず、好き勝手やっていました。だから本当は成人式も出ないつもりでした」
「じゃあ、何で成人式に出たの?」

「20歳の誕生日のとき、母から手紙が来たんです。その手紙には“ありがとう”って書かれていました。2年間、病気で大変な母をほったらかし、ほとんど連絡も取らない私にたいして母は・・・」

「もうそろそろお迎えがくるかもしれないそうです・・・だから最期に言っておきたくて、私のもとへ生まれてきてくれてありがとう。あえなくても私は毎日あなたを思っていて幸せでした本当にありがとう」

私は自分が情けなくなって、すぐに電話をしました。
「成人式の準備しといてよね!それまでに死んじゃダメだよ」
泣きながらがら話していました。

「お母さん素敵だね。大切にしなよっ!」
そう言った僕も泣いていました・・・

ゆう けい「魂が震える話」エイチエス株式会社より抜粋

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