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【書籍】「物事のなぜ~原因を探る道に正解はあるか」(ピーターラビンス著)英治出版

    
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【書籍】「物事のなぜ~原因を探る道に正解はあるか」(ピーターラビンス著)...

 

「はじめに」より抜粋

2011年3月11日、日本の東北地域沿岸に立つ福島第一原子力発電所を津波が襲った。その四〇分前、沖合海域を震源とする地震によって、原子炉は設計どおりに緊急停止していた。だが、その後の津波が予備電源を破壊したために、原子炉の冷却に必要な電源が失われてしまう。原子炉六基のうち三基にメルトダウンが発生し、大規模な放射性物質の放出を引き起こした。
この大惨事を招いた原因は何だったのか。簡単に言ってしまえば、地震と津波だろう。しかし、専門家による検証では、「技術および組織上の脆弱さ」が指摘されていた。たとえば、発電所と電力会社内での指揮系統の弱さや、原子力発電所の運営・監督基準に、現場の自主性に任される部分があった点などだ。さらに、設計の落ち度を指摘する声もあった。
たとえば、電源喪失が長期化した場合に備えて、冷却機能を維持する仕組みを用意しておかなかったことや、そもそも一か所にこれほど多くの原子炉を設けたこと自体、間違っていたのではないか。

……事故の原因は多岐にわたる。
発電所のさまざまな要素が互いに、しかも多重に絡み合っていたことや、
設計や経営、行政による許認可、財務、災害対策などに携わる多くの部署が、事故の原因になりうるものすべてを予測することは人間にはできないということを認めたがらなかった事実
──つまりは、人の傲慢さも原因のひとつであった。

私は三五年以上、精神科医として働いてきた。
仕事中に、「原因」についての質問をよく受ける。
「なぜ私は、うつになったんですか。何がいけなかったんですか。どうすればよかったんですか。
ひょっとして、子どものころの経験のせいですか」
「神様の罰でしょうか」
「なぜ私は、上司と揉めては仕事を辞めてしまうのですか」
こうした質問を受けつづけたので、私はこの本を書こうと思い立った。
「なぜ」という質問は自然で重要なことのように聞こえるし、
たいていの人は答えがあるはずだと思っている。

そうなんです。
著者は、精神科医である。
だから、うすっぺらい「原因論」を持ち出すことなく、複雑な「なぜ」に果敢にアプローチしようとしています。

「原因」そのものにも、唯一の定義がない。
原因をどう理解するかは、時間の経過によっても、属する文化によっても異なる。
原因や因果という概念の存在を、だれも証明できない。

こうした、立場から考察をしていきます。

うすっぺらな、ロジカルシンキングでは、ものたりないあなたへ。
ぜひ。

 

 

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